第32進海丸@東京グローブ座

screenshot
演技者。「さよなら西湖クン」の作者でもある、劇団モダンスイマーズの蓬莱竜太さんの書き下ろし作品。演出は自転車キンクリーツの鈴木裕美さん。
いやぁ、ワタクシ史上最大に泣いた舞台ですわ。いやいや最近涙腺が緩すぎることもあるんですけど、脚本が泣かせる構造になっているんですもの!
以下ネタばれ


●「第32進海丸」
【作】蓬莱竜太 【演出】 鈴木裕美 【出演】三宅健 /山崎裕太 /伊崎充則 /大石継太 /大鷹明良 /西條義将 /小椋毅 /菅野菜保之 /天宮良 /阿南健冶
●ものがたり
高知の漁港近くにあるバー・マリーナ。牧野サトルが店番をしているところに進海丸の通信士・木原マナブがやってくる。進海丸は数カ月前に他界したサトルの父が生前に船頭を努めていた船であり、父は"黒潮の狩人"と呼ばれた伝説の漁師だった。それまでフラフラと遊んで生きていたサトルだったが「漁師になりたい、進海丸にのりたい」と木原に口利きを頼む。

そこへ1階で宴会をしていた進海丸のメンバーが次々に現れる。伝説となった前船頭の後を引き継いだものの、漁獲高1位をとることができずにいる現船頭の坂本、坂本と船頭の座を争う河内、坂本を慕って他船からやってきたイサオ、坂本が千葉から引き抜いた芹沢、木原マナブの父であり進海丸の船主である木原コウゾウ、そしてサトルの兄であるヒロシ。加えて進海丸の行く先々で漁場についてまわるハイエナ船・戸田丸の船乗り2人。
皆は、働くこともせず、父親の稼いだ金で遊んでばかりのサトルの申し出に困惑する。特にサトルの幼なじみでサトルに虐められていた過去のあるイサオ、遊び放題のサトルを知っている兄のヒロシは「お前には乗れない」と猛反対するが-------。

登場人物は男ばかり10人。ワンシチュエーションで時間の飛躍もない、極シンプルなストレートプレイ。
後で買ったパンフを読んだら*1、「小手先で何でもできるタイプとは違う健くんを見て、"こういう風に生きて行きたい"という意志を持っているのだけれど、素直に言えず周囲とぶつかってようやく本音を言える主人公にした」とあったので、まぁ納得。書き下ろしならではですね。大きく話が動く訳ではないけれど、主人公サトルが漁師になりたいと思うに至った理由鯀把召妨世錣覆ぁ?世?蕕海充?蓮併笋燭全儺劼癲鉾爐凌唇佞鮨笋稽未襪鵑世韻譴鼻△修譴2転3転するんですよ。結果的に器用ではないサトル(=健くん)に、観客が惑わされるというか翻弄されるというか。
サトルの父や漁師という職業に対する思い、それに兄のヒロシとの関係。イジメっ子サトルとイジメられた側のイサオ。そのイサオといつまでたっても餌巻き係のヒロシ。伝説の船頭の後を引き継いだ坂本の思い。船主・木原とその息子で通信士どまりのマナブ。それぞれの想いが交錯。細かいキーワードが後々になって他のエピソードにうまく絡むあたり、ほんっとうまくできた脚本だなと感心しきり。
ワイドショーで報道もされていましたが、後半健くんが舞台で男泣きするんですね。ワタクシも1列目で(といっても彼のいる場所とは反対側なのであまり鮮明にはみえず)確認しましたが、本当に涙流していました。でもそれにつられて、というよりはやはり脚本に泣かされた感が。
お笑い部分は戸田丸船員(モダンスイマーズ西条、小椋)と船主・木原(菅野)あたりが程よい分量で。阿南さん、今回は渋い表情で内に秘めた優しさがにじみ出る感じ。稽古と平行してジョージ(@ギャルサー)やってたんだよなぁ。船主・木原役の菅野さんは、お笑い部分もやりつつ、ビシっと空気変える演技に貫禄が。イサオ役の山崎裕太くん、制作発表で本人も言っていたけれどすっかりジャニ専用対立役俳優。兄ヒロシ役の伊崎くん、気弱な役やらせたらほんとに上手いですねぇ。
ラスト、あの照明の中でのヒロシとサトルはもう卑怯としかいいようがない。ありゃ泣くって。照明の感じは「演技者。/アメリカ」を彷佛させました。こっちの方がハッピーだけれどね。

*1:泣きの勢いで購入してしまった